癒されるとは
「145gの孤独」(79/122)
一球の投球ミスで、
生きていく意味を完全に失った元プロ野球選手が、
再生していく物語。
そんな「良くありがち」な心温まる物語に、
意外と切れ味鋭いミステリ要素を、
テンポ良く差し込んであるんで、
ちょっと要注意。
更に「大ネタ」も仕込んであって、
伊岡瞬、やるね。
子供のお守りとか、
フィリピンパブ絡みの色恋沙汰とか、
泊り込みでの掃除の手伝いとか、
最後は、
新人歌手のフォローとか。
それぞれの仕事の裏側にある「些細な」謎を解いていく。
些細といっても、当事者たちにとっては、
重大な問題だけども、
騒々しい世間では、誰も気にしないような事件。
そこにミステリがある。
非常に掴みどころがない感じで「事件」が進行していく。
それが、良くありがちな、単純なハートウォーミングな作品とは違い、
世の中の大勢を占める悲しさ、辛さ、痛みの中に、
ほんの一かけらしか安らぎは存在しなという現実を、
静かに、読者に叩きつける。
でも、その一かけらの為に、みんな生きてるし、
その一かけらを手に入れたとき、
いや、手に入れなくても、存在に気がついたとき、
人は癒されるのだろう。
主人公、倉沢にとっての145g(=野球の硬式球の重さ)。
僕にはあるのだろうか?145gの何かが。
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
- 作者: 伊岡瞬
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/09/25
- メディア: 文庫
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
(20081021-20091020.139/122)
(20071021-20081020.134/122)
(20061021-20071020.133/122)
(20051021-20061020.128/108)