趣味は「読書」ですから

毎日、本が読めて、美味しいお酒が飲めて、走って、そして楽しい仕事が出来る。それが一番。何事もなく、今日も読書が出来ることに、本当に感謝です。

帯の一文、斬れてます

「償い」(53/122)



     悲しいけれど、暖かい。



文庫の帯の、このキャッチの通り。
そう、まさに、
陳腐な言葉かもしれないけど、
この作品はには最適な一文です。


主人公は、元医者のホームレス。
埼玉県の冴えないベッドタウンに訳ありで住み始めた。
そこで、殺人事件に巻き込まれる。
ふと偶然出会った中学生の少年と共に、
物語は、進んでいく。


がしかし、ありがちな社会派ミステリーとは一線を画す。
ホームレスの悲哀、切なさ、惨めさは、それほど書きこまれていない。
中学の、所謂「心の闇」も鋭く抉り出されているわけではない。
心凍るほど、悲しくない。
涙が感動するほど、暖かくもない。
過剰ではない。
そこが、解説の小梛冶宣氏が言っているように、
矢口敦子が「真物のみが放ち得る純粋な輝きがある。」筆力の持ち主という証明なのだろう。


とはいうものの、ミステリーとしての緊張感は秀逸。
序盤からの展開はミスリード
そうだよね、ミスだよね?
え、やっぱり、ミスじゃないの?
ねえ、ねえ、どっちなの?



この作品、
結果的に、悲しいのでしょうか?暖かいのでしょうか?
読むたびに違うような気がします。
オススメです。





はてな年間100冊読書クラブ(2006-2007.133/122)(2005-2006.128/108)
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
http://ameblo.jp/yonyonsan/

償い (幻冬舎文庫)

償い (幻冬舎文庫)