何がリアルなのか?
「アヴェンジャー・上」(71/122)
「アヴェンジャー・下」(72/122)
フォーサイスの文章、
それに呼応する翻訳の篠原慎の日本語は非常に「味気ない」。
そこには、人の生きている感じが書き込まれていない。
空気じゃなくて、酸素のみって感じ。
そんな文字の波が淡々と語る、極上の軍事スリラーを堪能。
これこそ、リアルなのか?
ボスニアでの虐殺、民族浄化という名のテロに端を発し、
物語は、ベトナム戦争での暗部を鮮やかに、残酷に、リアルに描きつつ、
アラブ、そして南米でのクライマックスに。
その先には、あの、9・11が。
その裏には、CIAの大いなる作戦、否、陰謀?
いや、その答えは、まだまだ謎のまま。
このあたりの展開がフォーサイスの妙味。
やっぱり、フォーサイス。だから、フォーサイス。フォーサイス万歳。
主人公の仕事は「人狩り」=アヴェンジャー。
一見、非常に冷徹なんですが、
そこに至るまでの、人としての温かさが素晴らしい。
そして、彼に助けられた人達の描き方が秀逸。
そんな、夢みたいな話、あるわけないじゃん、という捨てるのは容易だが、
そこに希望を見出すのが、本当の、リアルな感情なのでは。
やっぱ、フォーサイス、リアル、本物です。
充実の作品でした。
※はてな年間100冊読書クラブ(2006-2007.133/122)(2005-2006.128/108)
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
http://ameblo.jp/yonyonsan/
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