この冒険、「厚い」
「伝説なき地・上」(24/122)
船戸与一の書き綴る冒険は、
なぜ、こんなに面白いのか?
荒削りのように見えて、
実は、細かなミステリー要素が、
計算高く織り込まれているからなのだろうか?
本作品は、南米、コロンビアとベネズエラが舞台。
幕開けはレイプ事件だが、
あっという間のサイドチェンジに動揺しているうちに、
二つの話が、それぞれ、非常にドラマチックに進んでいる。
重く、熱く展開する物語。
一つは、コロンビアで暗躍する日本人悪党2人。
ここで描かれる刑務所からの脱出劇だけで、
十分一本の映画にしても良いくらい、中身の濃い物語を堪能できる。
もう一つは、ベネズエラの落ちぶれた名門家での話。
破廉恥であり、野生的であり、直感的な登場人物たちがくりひろげる、
壮絶な「ホームドラマ」は、
実は繊細に描かれているため、決して陳腐ではない。
生きていく力に、貴賎は無い。
ぐいぐいと物語に引き込まれていく。
そんな二つの流れが、
下巻で集結したとき、
何が起こるのか!?
上下で文庫全1,100ページ。
この分量ならではの醍醐味。
日本推理作家協会賞受賞作に、超期待。
※はてな年間100冊読書クラブ(2007-2008.134/122)(2006-2007.133/122)(2005-2006.128/108)
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
伝説なき地〈上〉 (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集)
- 作者: 船戸与一
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2003/06
- メディア: 文庫
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