無念、でも、人は逝くのです。
「名残り火」(126/122)
藤原伊織の最後の長編。
サラリーマン・ハードボイルド。
こんなに早く逝ってしまうなんて、
世の中って、無常というか、ひねくれているっていうか。
自分の命の残量を量りながら、
綴った作品かと思うと、
背筋がピンと伸びます。
唯一の「友」と言える男が襲われた。
そして、死亡した。
何事にも妥協を許さない、許せない不器用な主人公・堀江。
友の死は、どうしても解せない。
特殊な「過去」を持つ彼が、
その事件の背景を暗闇から引きずりだす。
※過去は「てのひらの闇」を読んでね
コンビニ・ビジネスを土台としつつ、
サラリーマンの「みっともない」パワーゲームが展開される。
でも、人は、みっともなくても、何でも、
生きていかなくてはならなくて、
そんな哀しみも漂う。
もちろん、作中には、
全くもってして、凛々しく生きている人たちも登場する。
でも、それは偶像なのかもしれない。
堀江も、暴力という「愚かさ」でバランスを取らなくては、
真っ直ぐに歩いて行けない生き物なのだから。
サスペンス展開は一級品。
仕掛けも上等。
絶妙な具合で散りばめられている諧謔要素も流石。
なのに、なぜ、死んじゃうのかな。
もっと、もっと、もっと、読みたかったよ。
ラストに堀江が見つけた、
明日への希望の欠片は、
今後、どうやって、大きくなっていくのか、
知りたかった。
でも、
自分に「先が無い」のが分かっていたからこその、
この結末だったのかと思うと、
この作家の、命をかけて仕掛けた技の巧みさ、
凄すぎるぜ。。。
改めて、ご冥福をお祈りします。
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
- 作者: 藤原伊織
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/06/10
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