なぜか、心が動かされる
「どうせ死ぬ身の一踊り」(70/144)
まずは芥川賞に感謝。
もし、この賞がなければ、
僕は西村賢太の作品にぶち当たらなかったわけです。
本との出会いは、こういう賞がもたらしてくれる場合が、
意外と多いんです、僕の場合。
だから、
候補作を選定する皆さまと、
受賞作を最終的に決定する審査員の方々、
今後もよろしくお願いします!
で、読み終わって、解説読むまで、
実は気がついてませんでした。
本作品が「私小説」ってことに。
それくらい、「私」がない私小説なのかな〜
それを純粋無垢というのも乙なものだ。
藤澤清造という大正時代のレアな作家に全てを捧げる男。
それが、西村だ。
DV野郎で、ヒモ体質で、内弁慶で。
気まぐれで、金にルーズで、自分に甘い。
すぐに喧嘩。
自制できない。
でも、ちょっとした理性がある分、始末に負えない。
そこには、実に潔い「ダメな男」が描かれる。
でも、その男は、
藤澤清造の全集刊行を目指す。
さらにダメオシのように登場する、
よくいる「ダメ男」しか愛せないと錯覚し、
そこに生きる目的を見出す女。
そんな女でさえも素晴らしく思えてくるほど、
この男はダメである。
そんな男と女と藤澤清造の小説、
どこが面白いのだろうか?
う〜む、言葉で説明できない。
理性的に文字化できる面白要素が見当たらない・・・
でも、でも、
何か心に刺さるというか、ひっかかるというか。
敢えて言うならば、
そこにあるかもしれないinnocentの欠片が。
innocentなんていう嘘に決まっているという心の片隅にある、
モヤモヤしたものが。
この文章の中に潜んでいるのかもしれない。
さすが、芥川賞作家。
すぐ読めます、240ページ。
小説らしい小説を読みたい方、オススメです。
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
- 作者: 西村賢太
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