趣味は「読書」ですから

毎日、本が読めて、美味しいお酒が飲めて、走って、そして楽しい仕事が出来る。それが一番。何事もなく、今日も読書が出来ることに、本当に感謝です。

究極の構成美

「わたしを離さないで」(132/144) 
 
 
ついに読みました。
カズオ・イシグロ。 
映画にもなったこの作品。
そこはかとない「恐怖」を本当に薄く、薄く、薄く、薄く敷き詰めながら、
決して読者にアピールすることなく、
物語は進む。
 
本作品「大ネタ」ものです。
何気ない二人の少女、一人の少年のスクールデイズものと思わせつつ、
実は、とんでもない物語なんです。 
でも、その大ドンデン返しを楽しむ作品ではありません。
もちろん、そのカタルシスは相当なものですが、
この作品の主たる楽しみではないのです。
敢えて、その大技を、惜しげも無く読者にリリースします。
カズオの「余裕」に読者はうたれます。
 
主人公キャシーの抑制の効いた語り口が、
この緻密な作品を織りあげていきます。
一部の隙も無い文章の積み上げがあるからこそ、
この物語は成立するのです。
隠された真実を知る時の読者の感情。
この衝撃の事実を、自然と受け入れている自分自身が最大の衝撃である。
こんなおぞましい事実をすんなりと受け入れている衝撃。
 
その美しき衝撃を、
あなたも味わってみませんか?
翻訳の土屋正雄も秀逸です。
読書好きなら、マスト本かと。
 
 
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

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