究極の構成美
「わたしを離さないで」(132/144)
ついに読みました。
カズオ・イシグロ。
映画にもなったこの作品。
そこはかとない「恐怖」を本当に薄く、薄く、薄く、薄く敷き詰めながら、
決して読者にアピールすることなく、
物語は進む。
本作品「大ネタ」ものです。
何気ない二人の少女、一人の少年のスクールデイズものと思わせつつ、
実は、とんでもない物語なんです。
でも、その大ドンデン返しを楽しむ作品ではありません。
もちろん、そのカタルシスは相当なものですが、
この作品の主たる楽しみではないのです。
敢えて、その大技を、惜しげも無く読者にリリースします。
カズオの「余裕」に読者はうたれます。
主人公キャシーの抑制の効いた語り口が、
この緻密な作品を織りあげていきます。
一部の隙も無い文章の積み上げがあるからこそ、
この物語は成立するのです。
隠された真実を知る時の読者の感情。
この衝撃の事実を、自然と受け入れている自分自身が最大の衝撃である。
こんなおぞましい事実をすんなりと受け入れている衝撃。
その美しき衝撃を、
あなたも味わってみませんか?
翻訳の土屋正雄も秀逸です。
読書好きなら、マスト本かと。
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
- 作者: カズオ・イシグロ,土屋政雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/08/22
- メディア: 文庫
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