picaresque
「ミノタウロス」(153/144)
ピカレスクロマン。
あらためて意味を確認してみる。
picaresqueとは「悪漢」(が主人公)の〜、とことらしい。
悪漢が、悪いやつらが活動、活躍する小説。
それがピカレスクロマン。
16世紀、スペインにおこった小説の一形式とのこと。
下層階級出身で
悪知恵に富む主人公の
体験や生活を、
諧謔と風刺をもって描く。
彼らの体験とは、多くは犯罪、窃盗や詐欺、暴力や殺人となる。
本作品では帝政ロシア崩壊後、
20世紀はじめのウクライナ地方が舞台となる。
主人公ヴァシリの、
一般的には「堕落」「転落」と認識される人生を描く。
でも、彼にとっては堕落ではなかったのかも。
読んでいて、そういう気分になれるから、
ピカレスクロマンは成立するのだろう。
犯罪の描写、暴力シーンばかり読んでいて、
何が楽しいのだろうか?
普通はそう思うに違いない。
しかし「生」と「悪」は非常に密接な関係にある。
生きる行為の裏に何があるのか?
人は自分が生き残るために人を殺しても良いのか?
そんな根源的な問いが、
ピカレスクの中には潜んでいるような気がする。
ヴァシリの堕落、そして最終的な死を読み切って、
何を思うのか?
そういう「下向き」な読書の醍醐味。
だから、読書は止められないんです。
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
- 作者: 佐藤亜紀
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/05/14
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 364回
- この商品を含むブログ (26件) を見る
(20091021-20101020.150/122)
(20081021-20091020.139/122)
(20071021-20081020.134/122)
(20061021-20071020.133/122)
(20051021-20061020.128/108)