今の世界が本当である証拠はどこにもない
「緋い記憶」(3/144)
そして、
記憶していることが事実なんて、証明不可能である。
もちろん、記憶というものは、
証明なくして正しいことがある、という前提に立たなければ、
社会は成立しないし、
人間は生きていくことが出来ない。
そして「今」は不確かな記憶の積み重ねであるからして、
今を評価することなんて、
所詮、意味がない。
でも、そんなこと考えていたら、間違いなく狂う。
そんな凶器を感じさせる記憶をテーマにした短編集。
舞台は陸奥、東北が多数を占める。
ホラー小説、ではない。
自分の記憶から始まるミステリ。
「緋い記憶」。古地図と自分の記憶の中の地図の相違から、
恐るべき事実が明白になる。
「ねじれた記憶」。自分の記憶が時を越えて、
死の世界への扉を、そっと開ける。
「言えない記憶」。封印した記憶の先から、
忌まわしき真実が牙をむく。
「遠い記憶」。封印された記憶が解き放たれた時、
人間の心の闇が突如現れる。
「虜の記憶」。母から引き継がれた記憶が、
小さな小さな文字にならない歴史を紐解く。
「霧の記憶」。皆が忘れたい、消し去りたい記憶も、
一度、記憶されたしまったら未来永劫存在することを教えてくれる。
「冥い記憶」。喪失した記憶が戻ってきたとき、
哀しみの中の微かな希望が見える時もある。
どれも読み応え十分。
さすが、直木賞。
間違いない。
高橋克彦、何年ぶりに読むんだろう。
抜けてたな〜
ちょっと読み返えそ。
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
- 作者: 高橋克彦
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