信じる、という「強さ」と「弱さ」と「儚さ」と
「仮想儀礼・上」(89/144)
「仮想儀礼・下」(90/144)
読み応えあったな〜
文庫1,200ページに詰め込まれた「感情」に圧倒。
初・篠田節子、圧倒的に面白かった。
簡単に言えば、
脱サラ・リーマンが新興宗教を立ち上げて、
本人の思わぬ方向へ暴走していくストーリー。
でも、簡単じゃないのが、
そこに係わる様々な人々の感情。
基本的に「おどろおどろしく」なりがちな物語を、
主人公の(似非)教祖・正彦のシニカルな視点が
ささやかなユーモアを添えている。
そこが、この作品の感情を際立たせている点だと思う。
そう、当たり前のことだけど
宗教を信仰する人たちは普通の人たちなんだ。
ギャグだって言うし、笑うんだ。
そんな人たちが、集団リンチ殺人に走る様子を、
実に「普通」に書かれている。
中には「悪徳宗教家」も出てくる。
でも、最初から悪徳だったのだろうか?
そんな事も考えさせられる。
主人公・正彦は最初から「ビジネス」として新興宗教を立ち上げる。
悪徳ではないが、まあ「あこぎ」な宗教家の部類だろう。
だが、信者の信じる感情に翻弄されていく。
ゲームのシナリオをもとに作り上げた教団なのに、
信じる力が、何かを変えていく。
読みながら、
何が正しくて、何が間違いなのか、
本当に分からなくなる。
ま、当たり前。
そもそも、全ては相対的な正しさであって、
世の正しさは、日に日に変化していくものなのだから。
だが、その日々の移ろいに対応していく心が失われたときに、
人は絶対的正しさを欲し、
その先に宗教があるのかもしれない。
宗教について、
あらためて考えさせられた作品。
秀逸、オススメ。
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
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