ダメはより強くなり
「ウツボカズラの夢」(138/144)
日常的にいる少しだけダメな人たち。
致命的なダメではなく、
何かのキッカケで悪い方に転げ落ちる要素を孕んだダメを持つ人たち。
そこに人間のドラマを見つける乃南アサの視線に、
毎回関心させられるわけで。
ちょっとダメな父親に裏切られ、
長野の田舎から、死んだ母親の従妹の家庭に脱出を図った主人公・未芙由。
その家庭は団体職員の父、専業主婦の母、大学生の長男、高校生の長女の四人構成。
愛人、ヒモ、堕胎、不倫、無関心、就職、留学、家出、離婚。
どれも、何となく解決、否、見なかったことにしてクリアしているダメ家族。
未芙由はそのダメ家庭の中でのサバイバル生活を始めるのだが・・・
未芙由の視線で描かれる世界は、
非常に体温が低い。
冷静、クールなのではなく、低い。
何事にも熱くなれない。
そもそも、熱くある方法も知らないし、努力もしない人たちの中で、
ウツボカズラは着実に成長していく。
ラストの結婚披露宴のシーン。
この低温世界を生き抜いたものが勝者なのだろうか。
確かに勝った。
でも、その勝ちは、本当に欲しいものなのだろうか?
それすらわからない人たちのドラマに引きずり込まれていく本作品。
実に、巧い。読み応えあり。
本当のダメはここにある。
でも、ダメでもいいじゃん!って言いきることも大事だぜ。
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
- 作者: 乃南アサ
- 出版社/メーカー: 双葉社
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- メディア: 文庫
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