深みのある結末
「タンゴステップ・下」(45/122)
無事、事件は解決します。
スウェーデンを舞台としつつ、
最後はドーバー海峡を越える主人公。
そこで見つけた「答え」は、
物凄く、地味で、素朴で、実直で、
でも、根にはナチスドイツの亡霊が闊歩してて。
マンケルがうまいのは、
ナチスドイツと事件の関与具合の加減が絶妙なところ。
ナチス=悪という「定理」を使用しつつも、
それを前面に押し出すような稚拙なことはしません。
そして、やっぱり、舌に死(癌)を背負った男、
主人公・ステファンのキャラクター設定が秀逸。
なぜ、彼が、ここまで事件に執着するのか?という背景が、
読めば読むほど、読者の心にしみこんでくる。
彼の理不尽な行動に、
共感せずにはいられませんでした。
すぐれた推理小説は、
推理部分が霞んで見えてしまうという良い例ではないでしょうか。
素晴らしい作品でした。
多謝。
※はてな年間100冊読書クラブ(2007-2008.134/122)(2006-2007.133/122)(2005-2006.128/108)
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
- 作者: ヘニングマンケル,Henning Mankell,柳沢由実子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
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