人間の力なんて。
「踊る天使」(79/122)
永瀬隼介って、
ノンフィクション作家スタートなんですね。
本作品、所謂クライム・ノベルなんですが、
派手なんだけど、
どこか冷めてて、正確な切り口がチラ見できるんです。
火事・放火事件と80年代後半のバブルの後始末が、
歌舞伎町で交錯するとき、
真実が過去から蘇り、
人が死ぬ。
暗黒世界をヴィヴィッドに描きつつも、
そこにさりげなく刷り込まれる真実の重さ。
これが、本作品のエンタテインメント度を高めている。
バブル経済は当然ながら事実であり、
放火事件も、2001年9月1日の、あの歌舞伎町の惨事をモチーフにしている。
その負の余韻を実に巧妙に利用している。
炎を恐れない元・消防員。
風俗店に足しげく通っている元・銀行員。
彼女を失った元・ボッタクリバー店長。
人生を捨てようとしている元・風俗嬢。
バブルを操った暗黒社会の大物。
そして、
バブルを歌舞伎町で過ごした、元・少年二人。。。
敢えて言おう。
この作品に主役はいない。
人が出来ることなんて、出来ると思ってることなんて、
ほんと、ちっぽけなことでしかないってことを。
切実に語りかけてくる。
※はてな年間100冊読書クラブ(2007-2008.134/122)(2006-2007.133/122)(2005-2006.128/108)
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
- 作者: 永瀬隼介
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/01
- メディア: 文庫
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