いつの世から、物事の是非が結果で判断されるようになったんだね?
「冬そして夜」(74/122)
タイトルの一文、心にしみるでしょ。
文中に出てくる古いバーのマスターの言葉なんですが、
しびれます。
そうだよ、ショーティー、そうなんだよ。
今年の「このミス」7位だし
MWA最優秀長編賞受賞ってことで
とりあえず読んでみたものの、
この単純にハッピーでもなく、
かといって、完全なる絶望のみでもないラストに、
震えました。
これ、傑作ですよ。
本作品はS・J・ローザンの私立探偵「リディア・チン&ビル・スミス」シリーズの8作目なんです。
そんな事も知らなかった浅はかな私ではありますが、
この作品だけでも十分に楽しめます。
ビルの甥が警察に捕まった。
保護者として迎えに来てほしい。
そんな幕開けから、物語は社会の深層に流れる罪と闇の間をすり抜けていく。
甥の住む町ワレンズタウンで起こる「殺人」事件。
そして、23年前の「強姦」事件。
ただ、事件は事件だけにとどまらない。
町そのものが犯し続けてきた「犯罪」をビルは目の当たりにする。
アメリカン・フットボールというスポーツが、
これほどまでに、
小さな町に影響するのか、、、と空恐ろしくなりました。
物事に是非が「たかが」ハイスクールのアメフト基準で進む社会構造を、
正直、信じることができません。
が、しかし、
今の自分の周りでも、
実は、この「たかが」に支配されている危険な兆候があるのではないでしょうか。
そんな、思いが、この作品の強靭なる魅力なのでしょう。
読みながら、いつもとは異なった興奮を覚えました。
もちろん、サスペンスとしても、
非常に巧みです。
間違いない、連休に、読む本ないなら、まず、オススメ。
※はてな年間100冊読書クラブ(2007-2008.134/122)(2006-2007.133/122)(2005-2006.128/108)
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
- 作者: S.J.ローザン,S.J. Rozan,直良和美
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/06
- メディア: 文庫
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