自分の中にいる「善人」と「悪人」
「ヴェロシティ・上」(40/144)
「ヴェロシティ・下」(41/144)
久しぶりにクーンツ、読みました。
大きくくれば、ホラー作家なんですね。
改めて、そーんな軽い気持ちで読み始めました。
当然、もう紙面から目をそむけたくなるような、
強烈な描写が所々にあったりします。
痛いっていうか、吐き気を催すっていうか。
流石です。
でも、作品の本質は、もっと、ある意味「恐い」っす。
主人公・ビリーの心のブレ。
いつのまにか殺人事件に、思いもかけないスタイルで巻き込まれていく中、
どういう選択をすべきなのか、
ただ、ひたすら、葛藤する様は、静かだけど、燃えたぎっている。
ビリーの少年時代の「事件」の真相も明らかになり、
果たして、この主人公を、読者は信じていいのか?
という不安な気持ちにも襲われる。
この人は悪い人なのか?
誤解されているだけじゃないのか?
いや、やっぱり、罪深き奴なのかもしれない。。。
そして、明かされる、真犯人の狂気。
その狂気に対峙するビリーも、間違いなく狂っている。
でも、最終的に、ビリーは、、、
本当の人間性なんて、
わかるもんじゃない。
その人の、本当の姿なんて、他人が理解できるもんじゃない。
だって、当人だって、把握しかねてるし。
完全な善人がいないという事は、
完璧な悪人もいない、って事でしょ。
そもそも、殺人の動機なんて、
解明できないし。
なぜ、殺した?
それがわかれば、きっと、殺さないよ。
お金とか、プライドとか、とりあえず原因をくっつけなければ収拾つかないから、
仕方なくやってるだけでしょ。
一番、恐いのは、
あの人は、こういう人だ、っていう根拠なき決めつけ。
そこが、人類最大のホラーなのでは。
硬質な翻訳ものです。
ちょっと、ズシリとした作品を読みたい人にオススメ。
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
- 作者: ディーン・クーンツ,田中一江
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