ミステリ上級者のための悦びがココに
「エアーズ家の没落・上」(60/144)
「エアーズ家の没落・下」(61/144)
サラ・ウォーターズ、また凄い作品を。
なんだ、この結末は。
え。
これだけなの。
そして、読者は本の中に無限に拡がる世界に引きづり込まれるのです。
第一次世界大戦から第二次世界大戦、そして終戦。
時代の波にのまれて没落していく、
英国の地方貴族、というか領主?
その辺、日本人には正確なニュアンスが掴めないのが残念なのですが、
とにかく、第二次大戦後は、
自分たちの土地を切り売りしていくことでしか行けていけないエアーズ家。
そして、その下降線を象徴するかのように、
過去の威厳を保ちつつ荒廃していくハンズレッズ領主館。
広大なお屋敷を維持することが出来るわけもないエアーズ家。
母、娘、息子、たった一人のメイドと通いのメイド。
そして犬一匹。
そんな息詰まるしかない館に通うのは、主人公、医師・ファラデー。
館には、次々と不幸が訪れる。
その不幸度合いに比例するかのように、
エアーズ家に深入りしていくファラデー。
事故、火事、心の病、自殺、婚約破棄、そして、、、
英国の昔ながらのお屋敷の中で繰り広げられる悲劇。
その悲劇は、誰のせいなのか?
本作品、決して読みやすくはありません。
サラ・ウォーターズの独特な世界観。
これを愉しむには、ちょっと翻訳もの慣れしてる方が良いかと。
時の流れを噛みしめつつ、
じっくり味わえるミステリです。
是非、お試しあれ。
※「もう一つの趣味は「ランニング」ですから」
- 作者: サラ・ウォーターズ,中村有希
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2010/09/18
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